僕は千葉の美容室に3年間勤めてきましたが、ものの見方、価値観、考え方すべてが変わりました。国のこと、美容業界の現状など様々のことを教えていただきました。
日本は海外の人からするとサービスがいいと言われています。チップを出すのは逆に失礼になると思っている人もいるみたいです。接客においてはどの業界でも重要視しているので、それが競争となり、国全体のおもてなしのレベルが上がっているのだと思います。
おもてなしや接客を学ぶために、レストランやホテルなんかにも行ったことがあります。すごいセレブの方々が行くようなところではもちろんないので、そんなところじゃ学べないよ。という人もいるかもしれません。でも共通して思ったことは、すごく丁寧で気も使ってくれます。でも特に何も感じなかったんです。
ちょうど休みがあり、秋田に帰って、家族で温泉旅行に行ったときがありました。すごく有名でも高級なわけでもない旅館だったのですが、そのときいろいろ案内してくださったスタッフの方と会話したときとても心地よかったことを覚えています。何気ない会話で、会話内容も覚えていません。でもたしかに心が温かくなる何かがあったのだと思います。都内と地方でなぜ感じ方が違ったのか。
僕は愛情だと思います。
いくら丁寧な接客、丁寧な言葉遣いをしても、それをマニュアルでやっていたとしたら、それはロボットと同じです。丁寧な接客をしてもらって悪い気はしません。でも悪い気がしないだけで終わってまう気がします。心地がいいとか心が温かくなる感覚は血が通った言動や行動からでしか得られないと思います。日本人は頭がいいので、効率化をはかったり、より確実で正確なものの実現をはかったとき、型やマニュアルにはめた方がいいと考えたのだと思います。しかしいくらマニュアルにはめても、その人が持つ性格や考え方によって違いは生まれるとは思います。
あのときの旅館のおばちゃんはマニュアルなんてものはなくて、おばちゃんなりの言葉で僕らに向けて話してくれたのだと思います。
よく都会の人は冷たい、地方の人は優しいということを耳にします。漠然と決めつけるのはよくないですが、似たような感覚を持った人がいるということだと思います。どうしても都会ではあらゆるビジネスが動いています。いかにお金を稼ぐか、いかに効率よく稼ぐか、常に戦争です。それは仕方のないことです。みなさん常に仕事に追われ、休みを求め、ストレスと戦っています。
幸運なことに美容師という仕事は、お客様が目の前にいて、面と向かって接することができる。1人1人に愛情をもって接して、心と心がつながったらこんなに楽しいことはないと思います。仕事なんて苦じゃない。毎日死に物狂いで働き、ストレスを抱え、お金を稼ぐより、別に金持ちにも、偉人にもならなくていい、最低限の生活ができて、毎日心が満たされるならそっちの方がいい。あくまで個人的な意見ですが、僕は自分も相手も心が満たされる、そんな空間を作れたらなと思っています。