ここから書くことは、美容師としての意見になります。これまで、2つの床屋と1つの編み込みのお店にお世話になりました。ヘアスタイルも使う道具も作り方も日本とは全然違いますし、見たことのないものばかりです。その中で、様々なヘアスタイルを見てきました。
そこで気づいたことは、みんな自分の髪質を生かして、ヘアスタイルを作っているということ。
髪質によっては、出来るヘアスタイルが限られる人もいます。ですがその人はその人なりに、自分の髪質だから出来ることを探し、追及し、活かしています。そのヘアスタイルは、その人がコンプレックスに思っていることでも、人々を魅了するものを作り出しています。ブレイドやコーンロウ、これまで生み出されてきたヘアスタイルは、そういう考え方の延長だと思います。
日本では、髪質でクセがある人は、ストーレートにし、もともと直毛の人は、パーマで動きを出そうとします。黒髪が嫌な人は、カラーで髪色を明るくします。人が自分に“ない“ものを求めるものは当たり前のことです。自分も直毛なので、以前パーマをかけていました。
それらは技術の進歩の証拠であり、ある程度の人が、好きな髪型に出来る今の時代はとても素晴らしいと思います。でもあまりにそれが日本であたり前になりすぎていて、自分のもともと持っているものを活かそうという考え方をしなくなっている気がします。
本来であれば、自分のモノを最大限に生かして、自分にしかできないことを生み出す方が、その人を魅力的に見せるはずです。
今の美容師が、全くそういう考えを持っていないというわけではないですが、1人のお客様に対し、お客様が持っているものを最大限に活かし、その人のオリジナルを作ろうと、全身全霊をかけている人は少ない気がします。よりキレイに染まる方法、よりキレイに毛をまっすぐに、カールをつける方法を考えることに力を注いでいることが多いです。それが悪いということではありません。
ただ活かすということに道がもっと開ければ、より美容の幅が広がる気がしました。
全員誰もがどこかしらにコンプレックスを持っていると思います。それをすべて活かせるのであればそれに越したことはないです。でもそれは理想であり、かなり難しいことだと思います。
でも、活かすということであれば、スポーツがすごくわかりやすいです。他人より違う特徴を持つ選手が、その特徴を持つからこそ出来るプレーや技術を持っていることがあります。
それは自然と体がコンプレックスを補おうと違う部分をより進化させた場合もあれば、その人自身が自分の特徴を自ら伸ばした場合もあると思います。勝負の世界では、自分の長所と短所が入り交ざることがあります。
自分自身が嫌なところを必死に隠そうとしたり、なくそうとすることは悪いことではないですが、もし活かす、補うという考え方が出来るのであれば、より人生を豊かにする気がします。
自分のコンプレックスが克服したり、自分の特徴にすることが出来たときほど、楽しいことはありません。
少し考え方を変えて、もう一度自分を見つめなおしてみるのもありだと思います。
僕は美容師として、そのお手伝いが出来るように頑張りたいと思います。